HOSIDEN RECRUITMENT

PROJECT STORY #01

Touch Panel

車載用大型タッチパネル
開発プロジェクト。
クルマの未来の先手を読む。

クルマの進化が止まらない。近い将来、自動運転車が普及するといわれている中、ホシデンは得意とするカーエレクトロニクス分野で静電容量方式タッチパネルのさらなる進化に向けた動きを開始した。「運転義務がある移動手段」から「自動移動するエンターテイメント空間」へ。劇的変化を見据えた新たなるデバイス開発。その難題に3人の技術者が挑んだ。

O・S

表示部品生産統括所属
2001年入社 情報工学部 機械システム工学科卒

プロジェクトマネージャーとして全体を統括するとともにハードウェア設計を担当。ドイツに6年半赴任後、帰国し構想段階からこのプロジェクトに参加した。開発成功の要は、チームワークと強力な新人参入と話す。

N・N

表示部品生産統括所属
2004年入社 理工学研究科 環境共生工学専攻修了

電界シミュレーション、ソフトウェア、マテリアル設計を担当。工程管理ならびに実務責任者として開発にあたった。簡単な答えが出ない難解な課題にも、じっくりと考え、こだわる、妥協しない技術者だ。

M・Y

表示部品生産統括所属
2017年入社 理工学研究科 電子情報工学専攻修了

ハードウェア設計、プロトタイプ試作を担当。新人技術者ながらプロジェクトに参加することに最初は戸惑ったが、この経験を通じて、スピードという自分の強みと、正確性の向上という課題が見つかったという。

01

不断の決意から
プロジェクトは始まった。

ホシデンは2013年から自動車搭載用タッチパネルの量産を開始し、世界規模で多大なシェアを獲得している。現状では8~10インチ程の大きさのものだが、クルマの未来を見据えると、タッチパネルのさらなる大型化は必須だ。プロジェクトマネージャーとしてこの大型タッチパネル開発に携わったOは言う。「自動運転が当たり前の時代はすぐ目の前に来ています。そこでは、人と車のインターフェイスはより高度に進化し、エンターテイメントの要素を含め、大型ディスプレイの搭載が加速していくと予測されます。将来にわたって求められるデバイスとは何かを調査し、開発準備をすることで、自動車業界で起こっている変革に向け、我々がサポートできることとは何かを考えました」。

Oはまず、既存技術の応用での大型化を図った。理論上、それは可能であった。しかし、Oはここで大きな壁にぶち当たる。その壁は、車載用品が通常のデバイスよりも高い信頼性が求められることが原因だった。高温、高湿、振動、太陽光など、様々な条件下で正常に稼働する絶対的な信頼性と優れた高機能性が同時に求められる。「クルマのビジネスは信用が第一。実績ある技術の方がより信頼を得ることができるのが定石なのです」。

しかし、Oはここで決断を下す。既存技術の抜本的な見直しに着手することを決めたのだ。「既存技術で仮に目先の大型化に成功したとしても、来るべき時代に求められるデバイス全てに対応できない可能性がありました。そのため、現行のシステムや材料から一旦離れて、新しい技術を追求することにしたのです」。実績のない技術への挑戦と言えば、聞こえは良いかもしれない。しかし、Oが下した決断は目先が見える道を外れ、暗闇を進むことであった。

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Touch Panel

02

開発に加速を促した
電界シミュレーション。

マンパワー不足もOは感じていた。ここで、プロジェクトに救世主が現れる。これまで様々な開発において常に新たな技術領域に挑んできたNだった。「Oさんが新型のタッチパネルの開発をしていることは知っていました。従来のシステムと材料を根本的に見直すということで、私にいつ声がかかっても良いよう、ある程度準備はしていました」。

Nが加わったことで、開発は一気に加速する。Nは、電界シミュレーションを用いて、静電容量を計算していった。ホシデンのタッチパネルは静電容量方式が用いられており、画面に指が触れると発生する微弱な電流(静電容量)の変化をセンサーで感知し、タッチした位置を測定する仕組みになっている。タッチパネルには、ディスプレイの上に電極が張り巡らされており、さらにその表面に保護カバーを重ねた構造になっている。タッチパネルの大型化により、電極も大型化するため、従来よりも抵抗の低い、かつ高感度化可能な新材料が必要になってくる。Nは言う。「試作改良時は、現行の試作品と事前に実施した電界シミュレーションとの相違点に着目し、シミュレーションのパラメータの見直しを何度も行いました。電極の配線だけでなく、材料や保護材等、無限にある組み合わせの中でどれが最適なのかを突き止めるのに苦労しました。タッチパネルの構造を研究し、これまで私自身が培ってきたノウハウを駆使して、なんとか新材料の見込みを付けることができました」。

Nの力添えにOも感謝の意を隠さない。「N君の電界シミュレーションで従来であれば何百という組み合わせをしないといけないものを10分の1にまで減らすことができました。開発に弾みが付きましたね」。

実際、Nの見込んだ新材料でサンプルを作成すると、期待通りの高感度を確保することができた。暗闇に一筋の光が差してきた。

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Touch Panel

03

プロジェクトに加わった
新たな力が躍動する。

「高信頼性」「高機能性」実現に向け、プロジェクトは大きく前進。シミュレーションと試作を繰り返しながら、厳しい耐久試験が行われた。さらに、ディスプレイの透過性を損なわない「光学特性」や視認性、反射率など、配慮すべき点があれば、しらみつぶしに一つひとつ問題を潰していった。ようやくお客様先に提案できるデモ機ができそうだとメンバーが確信を抱いていた時だった。「これ、おかしくないですか?」と、一人の若手社員が声を上げた。声の主は、開発メンバーに最近加わったMだった。Mが指摘したのは、製品が実搭載される際に起こりうる機構上の問題点だった。Mは振り返る。「最初は何もわからない状態ながら設計手法を学んでいたのですが、ある時、ふと問題点に気づいて声を上げてみたのです」。

OはMに直ちに修正案の提出を指示し、Mもそれに応えた。「最初は焦りましたが、何としてでも皆さんに食らいついていこうと思っていました。周囲のアドバイスをもらいながら、図面をCADで描いて修正案をすぐに提出しました」とMは言う。

「彼はスピードが持ち前なんですよ」と笑顔でOは話すが、Mが指摘した点はテクニカルな問題のみならず、技術者にとって陥りやすい弱点であったとOは言う。「技術者は目の前のものづくりに集中しがちになり、自分本位の開発に陥ることがあります。そうした際、ついお客様の視点を忘れがちです。M君が指摘してくれたように、お客様の視点を含め多角的に製品を見る目を決して忘れてはいけないのです。市場のニーズを見失うことは、私たちにとって死活問題となりえます」。

プロジェクトに新たな力が加わった。Oのリーダーシップ、Nの妥協なきものづくりへのこだわり、そしてMのスピード&レスポンスだ。「三者三様の持ち味、個性を活かして団結しながらより良いものをつくっていきたい」とOは言う。

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Touch Panel

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